21巻 第1号 2007年4月


巻頭言

    成熟が待たれる日本の内部統制

                     木村昌弘… 1

研究論文

    新しいホームセキュリティシステムの提案

    −ユーザの利便性とセキュリティを向上させるために−

藤川真樹、土井 洋、辻井重男… 3

    個人情報性の要件としての識別可能性

    −EU及び英米日における公的解釈の比較

中田 響…14

 

解説

  大学・大学院における情報セキュリティ教育について

内田勝也…25

  KDDIのセキュリティ教育への取り組み

後藤直樹30

  民間における情報セキュリティ教育の現状と課題

安田 直35

  地域におけるセキュリティ教育の現状や課題

会田和弘…41

ニュースレター

………………………………………………47

 


新しいホームセキュリティシステムの提案

−ユーザの利便性とセキュリティを向上させるために−

Proposal for a New Home Security System

- Improving User-friendliness and Security -

中央大学研究開発機構   藤 川 真 樹

Research and Development Initiative, Chuo University  Masaki FUJIKAWA

情報セキュリティ大学院大学   土 井   洋

Institute of Information Security        Hiroshi DOI

中央大学研究開発機構   辻 井 重 男

Research and Development Initiative, Chuo University      Shigeo TSUJII

要 旨

現状のホームセキュリティシステムでは、宅内に設置する端末にタイマーを内蔵させている。これは、端末の警備モードをdisarmedからarmedに変更してから外に出てドアを閉めるまでの時間(外出時)、およびドアを開けてから端末の警備モードをarmedからdisarmedに変更するまでの時間(帰宅時)をユーザに与えるためである。ところで筆者らは、このタイマーの存在が、ユーザに「精神的緊張」と「煩わしさ」を感じさせているとともに、もし空き巣が侵入したとしてもそのことを速やかに通知できないという問題を生じさせていると考えている。そこで筆者らは、これらの問題点を解決できるシステムを提案する。このシステムは、RFIDタグをユーザに持たせることにより、ユーザ本人の認証やユーザの動きを把握できるため、端末はユーザの動きに応じて適切に警備モードを変更できるとともに、空き巣の侵入を迅速に通知することができる。筆者らはまた、実験によって提案システムが有効に機能することを確認したり、提案システムの有効性を述べたりするとともに、提案システムの実現可能性について考察する。

 

キーワード

 警備モードの変更(armeddisarmed)、ユーザの認証と動きの把握、アクティブ形RFIDタグ

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個人情報性の要件としての識別可能性

−EU及び英米日における公的解釈の比較

Meaning of ‘Identifiability’ in Data Protection Laws: EU, UK, US and Japan

総務省情報通信政策研究所  中 田  響

Institute for Information and Communications Policy   Kyo NAKATA

要 旨

EUのデータ保護指令、英国の1998年データ保護法、米国の児童オンラインプライバシー保護法、我が国の個人情報保護法の各法令は、いずれも、特定の個人を識別可能な情報の取扱いについて規律した個人情報保護立法である。本稿は、EU及び英米日の所管官庁等が、各法の定義規定の公的解釈において、個人の識別可能性をどのような基準で判断しているかを比較検討した。その結果は、データ保護指令の解釈を担う29条作業部会と1998年データ保護法の所管官庁である情報コミッショナーは個人との論理的な対応関係に着目したアプローチを、児童オンラインプライバシー保護法の所管官庁である連邦取引委員会は個人の位置や意思に到達できるかどうかに着目したアプローチを、我が国の個人情報保護法の所管官庁の一つである経済産業省は個人の氏名に到達できるかどうかに着目したアプローチをそれぞれ採用しているというものである。

 

キーワード

 個人情報、プライバシー、識別可能性、データ保護指令、1998年データ保護法、児童オンラインプライバシー保護法

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