2010年10月

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東京電機大学 教授
会長 佐々木 良一

早いもので私が会長に就任してから2年以上がたちました。会長への就任にあたって次のようにしていきたいと書きました。

(1) 活発な活動を通じて社会に役立つ学会へ
(2) 会員に役立つ学会活動を

そして、これを実現するため、今後以下のような対応が必要になると記述しました。

(1) 学会論文の質の向上:学会誌の発刊回数の増大に伴い掲載論文の数は確実に増加しております。また、量の増大に伴い質のよい論文も少しずつですが増えてきています。さらに投稿論文を増やすことにより、質の向上を実現していきたいと考えています。

(2) 全国大会の発表件数の増大:投稿論文の数を増やすためにも、全国大会での発表件数を増やす必要があると思います。これは、辻井前会長での悲願でもありぜひ実現していきたいと考えています。発表を行うのは会員として当然のことであるという意識改革や、学生の発表コーナの増加などを図っていきたいと思います。

(3) 研究会活動の活性化:学会の活力を支えるのは研究会活動だと思います。また、このことが、全国大会での発表の増大や、論文の量や質の向上につながっていくのだと思います。研究会活動の中で、海外の調査などにとどまらず、新しい方法論の提案やケーススタディの実施などを強化し、さらなる新たな価値の創造を期待したいと思います。私自身も、今までは研究会活動に熱心ではありませんでしたが、今回、ITリスク学研究会を立ち上げ活動を開始しました。

(4) 国際化の進展:何とかして日本のセキュリティ・マネジメント活動や技術を、海外に発信できるようにしていきたいと思います。すぐに、単独でというのは難しいので、関連学会などと協力しながら実施していきたいと思います。

(5) 実用化の推進:本学会は実務家の方も多く、学会活動から得られた知識や技術がそのまま実用化されている部分も多いのですが、企業などに属する会員以外の人たちにこれらの技術などを広め、安全、安心な社会の実現に貢献していくことも大切ではないかと考えています。このため、日本ネットワークセキュリティ協会など業界団体との協力の強化も必要だろうと思っています。

今振り返ってみると研究会活動の活性化や国際化の進展などうまく展開しているものもあります。特に国際化の進展については関係者のご努力のおかげで、全国大会でInternational Sessionを開催するところまでこぎつけています。一方、少しずつは改善されていますが展開が今一歩のものもあります。これらについては引き続き改善を図っていきたいと思います。

このような中で日本セキュリティ・マネジメント学会は、おかげさまで来年で創立25周年を迎えます。この創立25周年を迎えるにあたり、記念となるべき次の三つの事業に取り組んでいくことにしました。

  • 記念事業1 「社会への提言」 (担当:大木副会長)

セキュリティマネジメント学の成果を応用し、実社会に適用することで現代社会の課題のいくつかに新たな解決の糸口を見つけることをテーマに、これから1年間に様々な単位で社会への具体的な提言案のまとめに取り組んでいただきます。例えば、研究会単位での取り組み、理事会としての取り組みなど、あるいは一般会員からの募集なども受け付けます。

  • 記念事業2 「セキュリティマネジメント学 -理論と事例-」の編纂 (担当:松浦常任理事)

学会としての出版の意義は、学会の権威をもって新たな研究分野に関する一定の解釈を定着させ、さらなる研究の土台にすることにあります。10周年では3部作の「セキュリティハンドブック」を出版しましたが、25周年では、セキュリティマネジメント分野における研究の類型をアプローチ毎に解説する「セキュリティマネジメント学 -理論と事例-」を出版の予定です。

  • 記念事業3 「JSSMアーカイブ」の編集 (担当:大井監事)

JSSMの発足からこれまでの記録が散逸しかけています。これ以上の逸散を避けるためこれまでの記録を集積し、デジタルライブラリーとして保存することとします。例えば、学会年表の作成、年次大会の内容、研究会の推移、特別イベント(国際講演会、特別講演会、公開討論会他)の整理などから取り組みます。

私は、情報セキュリティは総合科学であるべきだと今も思っています。幸い本学会は、文系の会員、理系の会員の両方が存在します。価値の違いなどがあって難しいところもありますが、このことがお互いに刺激しあって新たな価値の創造を可能にできると思います。本学会に期待されるものはますます大きくなっていると思います。活発な活動を通じて社会に役立つ学会にしていきたいと思っています。

また、これらの展開を実施する上で会員の増強も必要になってきます。みんなで協力して会員の増強を図っていきましょう。

以上