2015年の年頭のあいさつ
日本セキュリティ・マネジメント学会会長
東京電機大学 教授
佐々木 良一
ソニーピクチャーズへの攻撃に見られるようにサイバー攻撃はますます巧妙化、悪質化しつつあります。また、ベネッセ事件に見られるように内部不正に対してもきちんと対応していかないと企業の存続にもかかわりかねない状況になってきています。このような状況は、日本セキュリティ・マネジメント学会の活動をますます重要なものにしてきていると言ってよいでしょう。したがって、そのような状況に学会がきちんと対応できるようにしていく必要があると思います。
2008年の会長への就任にあたって次のようにしていきたいと書きました。
(1) 活発な活動を通じて社会に役立つ学会へ
(2) 会員に役立つ学会活動を
そして、これを実現するため、今後以下のような対応が必要になると記述しました。
(1) 学会論文の質の向上:学会誌の発刊回数の増大に伴い掲載論文の数は確実に増加しております。また、量の増大に伴い質のよい論文も少しずつですが増えてきています。さらに投稿論文を増やすことにより、質の向上を実現していきたいと考えています。
(2) 全国大会の発表件数の増大:投稿論文の数を増やすためにも、全国大会での発表件数を増やす必要があると思います。これは、辻井前会長での悲願でもありぜひ実現していきたいと考えています。発表を行うのは会員として当然のことであるという意識改革や、学生の発表コーナの増加などを図っていきたいと思います。
(3) 研究会活動の活性化:学会の活力を支えるのは研究会活動だと思います。また、このことが、全国大会での発表の増大や、論文の量や質の向上につながっていくのだと思います。研究会活動の中で、海外の調査などにとどまらず、新しい方法論の提案やケーススタディの実施などを強化し、さらなる新たな価値の創造を期待したいと思います。私自身も、今までは研究会活動に熱心ではありませんでしたが、今回、ITリスク学研究会を立ち上げ活動を開始しました。
(4) 国際化の進展:何とかして日本のセキュリティ・マネジメント活動や技術を、海外に発信できるようにしていきたいと思います。すぐに、単独でというのは難しいので、関連学会などと協力しながら実施していきたいと思います。
(5) 実用化の推進:本学会は実務家の方も多く、学会活動から得られた知識や技術がそのまま実用化されている部分も多いのですが、企業などに属する会員以外の人たちにこれらの技術などを広め、安全、安心な社会の実現に貢献していくことも大切ではないかと考えています。このため、日本ネットワークセキュリティ協会など業界団体との協力の強化も必要だろうと思っています。
このような思いの実現を加速するために、2011年に創立25周年を迎えるにあたり、次の三つの事業に取り組んできました。
□ 記念事業1 「社会への提言」 (担当:大木副会長)
セキュリティ・マネジメント学の成果を応用し、実社会に適用することで現代社会の課題のいくつかに新たな解決の糸口を見つける必要があります。このような検討を学会内の様々な単位で行い、社会への具体的な提言を行ってきました。
□ 記念事業2 「セキュリティマネジメント学 -理論と事例-」の編纂 (担当:松浦常任理事(当時))
学会としての出版の意義は、学会の権威をもって新たな研究分野に関する一定の解釈を定着させ、さらなる研究の土台にすることにあります。このため、25周年では、セキュリティマネジメント分野における研究の類型をアプローチ毎に解説する「セキュリティマネジメント学 -理論と事例-」を共立出版より出版しました。
□ 記念事業3 「JSSMアーカイブ」の編集 (担当:大井監事(当時))
JSSMの発足からこれまでの記録が散逸しかけていました。これ以上の逸散を避けるためそれまでの記録を集積し、学会年表の作成、年次大会の内容、研究会の推移、特別イベント(国際講演会、特別講演会、公開討論会他)などを資料としてまとめあげました。
このような活動により、少しずつは改善されていますが、セキュリティ対策の重要性の増大に比較すると、展開が今一歩と言わざるを得ないと思います。セキュリティに関連するいろいろな組織が誕生し、活動がおこなわれる中、本学会の活動は相対的に目立ちにくくなっているのではないかと心配しています。一方、私は、情報セキュリティは総合科学であり、文系の会員、理系の会員の両方がいるのが本学会の強みであり、その強みを発揮する場が十分あると思います。
2015年は学会の活性化を大きく加速する年にしたいと考えています。会長就任時に述べたようなことは、社会への提言を含め引き続き実施していく必要があります。そのためにまず大切なことは若手を中心に学会員を増やしてことだと思います。また、新たな活動を実施していくことも必要だと思います。常任理事や理事を中心に、みんなで意見を出し合って、学会の改善と新たな活動の提案をお願いしたいと思います。いろいろな組織ができてきていますので、すべてを本学会だけでやるのではなく、産官学のいろいろな組織を取りまとめた活動などを行うことも考えられるのではないでしょうか。
いろいろ書きましたが、社会のため、学会のために一緒に頑張っていきましょう。本年が会員の皆様にとって良い年であることを祈念しています。
以上